1)血管新生抑制剤(TNP-470)は、現在のところ自然転移を実験的にではありますが最も確実に抑制することが明かとなっておりますが、持続投与では20mg/kg/weekを、間欠投与では60mg/kgを3回/週投与することによってほぼ完全に肺転移が抑制されました。ただし、TNPの副作用としての体重減少もみられ実用的な投与量としては、この半分程度が適当と考えられました。実際に、10mg/kg/weekのTNPを持続投与した場合、体重減少も少なく、有意に肺転移巣数を減少させることが可能ですがその効果弱く、臨床応用には適さないと思われました。そこで抗癌剤との併用を試みました。TNP470の作用機序より同時投与では効果は減弱されると考え、TNP470(10mg/kg/week x2weeks)投与終了直後および3日目にCDDP2.5mg/kgを尾静脈より投与したところ、3日目投与において有意に形成される肺転移巣数の減少が観察されました。この現象は、血管新生の抑制を解除された時期には腫瘍の血流が増加し薬剤の到達が増加したため考えられ、将来的に本物質が臨床応用可能となった際に、Vascular Synchronizationによる化学療法の補助療法となり得るものと期待されます。さらに、TNPによる腫瘍細胞の細胞回転に対する影響を観察し、アポートシスとの関連についても検索中です。 2)EHDPは、骨肉腫細胞に対してその増殖や転移能には影響を与えませんが、組織学的には骨形成が著明に抑制されており未分化な像を呈しております。したがって、生物学的な態度が変化しているものと考えられました。今年度は、抗癌剤(ADM)に対する感受性の変化についての検索を行い、併用群において形成される転移巣数には有意差はみられないものの、湿性肺重量に差が見られ薬剤に対する感受性の変化が確認されました。 3)遺伝子レベルの検索では、高転移系と母腫瘍の間に置ける遺伝子の変化について研究を進めてきました。その結果、C-SLM(高転移系)とC-OS(低転移系)の間に癌抑制遺伝子の一つであるP53に変化のあることが判明しました。この点について現在さらなる検索を行っています。
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