本年度はヒト皮膚培養線維芽細胞に対するステロイドホルモン、甲状腺ホルモンとγ線の相互作用について検討した。 方法:ヒト皮膚培養線維芽細胞を継代培養し、実験には継代早期の細胞を使用した。倍地にThyroxine(T4)およびHydrocortison(HC)をそれぞれ0.1、1.0、10.0μg/ml添加、テレコバルト装置を用いγ線を0.7Gy/min、10Gy、照射し、照射直後、24・48時間後に細胞数を計測し細胞増殖能の評価を行い、24時間後に透過型電子顕微鏡により細胞形態を観察した。放射線照射は、線量が正確に制御でき、再現性を一定にできることから線種に、^<60>Coγ線を選定した。 結果:T4、HCを培地に添加することにより、HCでは単にγ線を照射するよりも、相加的にヒト皮膚培養線維芽細胞の増殖が制御されることが認められた。また、T4では細胞増殖を促進する傾向があり、放射線照射による障害を軽減するのではないかと考えられた。 問題点:個々の培養細胞の放射線感受性の違いにより、実験結果に若干の差異が認められるが、初代培養に、同年代、同一部位を用いることにより対応している。放射線照射により細胞増殖能は抑制されるが、細胞形態については、短期間の観察では著明な変化が認められなかったので、今後より長期の観察を行いたいと考えており、さらに遺伝子レベルでの解析も行いたいと考えている。
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