研究概要 |
慢性腎不全による血液透析患者でのうち、多様な病態を示す腎性骨異栄養症患者の腸骨骨生検を行い、同症の骨改変機構を解明している。今年度は特に、同症による二次性副甲状腺機能亢進症で副甲状腺切除を余儀なくされた患者の腸骨生検(21例)を患者の了解のもと施行した。現在我々は、自動画像解析装置(Luzex F;NIRECO)を使用し、正確性の高い骨形態計測を行っている。その結果、これまで線維性骨炎と画一的に言われていた本症の病態は線維組織量、蛍光標識率から3型に分類されることを発見した。すなわち線維組織の量と骨代謝回転から、軽度、中等度、重度に分類され、これが同症の重症度:PTH値、疼痛および筋力低下など臨床所見、と相関する結果を得た。また共同研究者の高石の発表したX線の重症度分類とも一部は相関するが、すべての所見とは相関しない、またAL-p、Ac-pなど他の骨代謝マーカーとは明瞭な相関は認められなかった。現在症例を増やし、新しい骨代謝マーカー(P1PCなど)、より詳細なX線分類との相関を検討中である。しかしこの重症度分類は重要でこれにより手術の適否を決定できるか可能性がある。一方、Polymerase Chain Reaction(PCR法)による半定量的IL-1,4,6の腎性骨異栄養症各病態別の発現率の違いは、線維性骨炎でその発現率が最も高く、骨軟化症、骨低形成症では有為に低かった。しかし正常の骨でも発現するものがあり、今後はより正確な定量性を持った検査方法が必要である。各種病態における骨構成細胞の違いを電子顕微鏡で検討したが、現在のところ細胞内器官などでの明瞭な差異は認められていない。
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