研究概要 |
コンフォーカルレーザー顕微鏡を用いた,伸縮刺激を加えない立体培養系での細胞骨格の検討では,ストレスファイバーの発現は当初の予想とおおよそ合致し,主として細胞層の上〜中層に認められた。これは,以前の研究結果から判断すると,ストレスファイバーの出現には細胞周囲のマトリックスの影響が大きいことが推察された。すなわち,コラーゲンを主体とするマトリックスが豊富に存在している状況ではストレスファイバーの形成が抑制されるものと考えられ,これは、生体内ではストレスファイバーが通常は観察されないことと合致しているものと思われた。次いで,フレクサ-セル用の特殊培養プレートを用いた立体培養系作成法として,低血清濃度下での培養法を開発した。これと平行して,伸縮刺激存在下での単層培養系でのヒト直皮由来線維芽細胞のストレスファイバーの発現様式と細胞挙動を検討した。その結果,伸縮刺激周期を秒〜数分単位にしても明瞭な変化は認められなかった。これに対して,1回の継続した伸展刺激存在下では,線維芽細胞が20〜30分後より小型化するとともにストレスファイバーの不明瞭化が認められ,もとの状態に戻るのに1〜2時間を要することが判明した。したがって,繊維芽細胞に与える伸縮刺激の周期として1時間前後が妥当であとうと推察された。一方,伸縮刺激にともなう抗平滑筋アクチン抗体を用いた筋線維芽細胞に出現に関しては一定の結果が得られなかった。
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