研究概要 |
in vitroおよびin vivoにおけるヒト真皮線維芽細胞に対する伸縮刺激の影響を検討するために,細胞内骨格であるストレスファイバー(SF)の動態をRhodamine-phalloidin染色を行い,螢光顕微鏡で観察した。 in vitroとして培養ヒト真皮由来線維芽細胞を,in vivoとして,Tissue Expander (TE)周囲に形成される線維性被膜の線維芽細胞と肉芽組織および瘢痕組織を用いた。 1.培養ヒト真皮線維芽細胞に伸縮刺激を加えると,細胞は1時間後より細く紡錘形になった。SFは2〜3時間後に細く不明瞭となり,5時間で再び太く明瞭となり,細胞長軸に一致していた。6時間後には細胞およびSFは伸展前の形態を示した。弛緩後6分ではSFは密集し,8分では細胞外へ突き出て折れたSFの断片と思われる小片がみられた。10分ではSFは細く不明瞭となっていた。 2.TE除去後1時間より細胞辺縁にSFの小片と思われる点状構造物が見られ,2時間後には細胞から遊離しているのが見られた。年齢やTEの挿入部位によらず,全症例で同様な変化が観察された。培養ヒト真皮由来線維芽細胞より時間的経過は長いが,弛緩刺激においては同様な変化と考えられた。 3.肉芽組織では,新生血管周囲に小型の線維芽細胞を認めるが,SFはみられない。最下層の線維芽細胞には明瞭はSFがみられた。上皮化部では上行する血管周囲にSFを有する細胞が散見された。一方,肥厚性瘢痕では全層にSFを有する線維芽細胞がみられるが,表皮直下ではSFの発達は悪く,中層以下でSFの著明な形成がみられた。また,退行期肥厚性瘢痕ではSFはほとんど認められなかった。
|