研究概要 |
変形性関節症は関節軟骨に摩耗をきたす疾患である.その原因として軟骨細胞に加わるメカニカルストレスが最も重要な因子の一つとして知られている.これまで,メカニカルストレスを細胞レベルで検討した報告はない.我々はFlexercell strain unitを導入してその解析を行った.この装置は,コンピューター制御による陰圧により細胞に対する伸長負荷を加えることを可能にした.軟骨細胞代謝の指標としてケラタン硫酸を使用したが,このglycosaminoglycan(GAG)はその分布が軟骨基質に限定されていることにより,鋭敏な軟骨代謝の指標となることが我々の研究で明らかにされた.また我々は以前より軟骨細胞における細胞内情報伝達機構について詳細な検討を行っており,特にプロテインキナーゼCの役割については我々が初めて明らかにした成果である.以上が本研究の特色である. 軟骨細胞にメカニカルストレスを加えると,その細胞形態が線維芽細胞様に変化した.細胞層よりのGAGおよびケラタン硫酸の遊離は亢進した.さらにメカニカルストレスにより軟骨細胞の固有の機能であるプロテオグリカン合成能は有意に低下した.以上の所見は変形性関節症における特徴的な所見であり,本研究によりその病態がin vitroで再現されたことを示している.さてプロテインキナーゼCの阻害剤の投与により,このプロテオグリカン合成抑制は完全に回復された.これらの結果は,軟骨細胞に対するメカニカルストレスの情報伝達にプロテインキナーゼCが関与することを示唆している. さらに我々はこのメカニカルストレスにおける細胞内情報伝達にガスメディエーターの関与を検討する目的で,軟骨細胞における活性酸素および一酸化窒素の検討を開始した.
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