研究概要 |
これまでにラットの坐骨神経切断後の脱神経筋、パチニ小体の形態的検索の結果、脱神経筋の変性とこれに続く再生筋細胞の出現があることが判明した。また,脱神経後のパチニ小体においては,小体内の神経終末は変性消失するが、その周辺の内外棍細胞は維持されることなどの知見を得た。さらに臨床例の脱神経筋、脱神経後のパチニ小体の構造変化についても同様な知見を得た。 また、これらの基礎研究の結果に新たな屍体解剖結果を加味して、現在治療不可能とされている臨床例の神経麻痺に対する新しい手術法である血管柄付神経移植の応用を開始し、世界に先駆けた長い(30cm)遊離血管柄付深腓骨神経移植術の腕神経叢麻痺への応用(J.Reconstr. Microsurg.12:131‐141,1996)、長い(20cm)神経付き遊離神経血管柄付大腿直筋または腹直筋移植術(Plast.Reconstr. Surg.,94:421‐430,1994,& Plast.Reconstr.Surg.Jan.1997)の陳旧性顔面神経麻痺への応用を、海外に先駆けて独自に完成させた。また、これまでの実験的、臨床的成果より新たに"分割した神経血管柄付筋移植術"を臨床的に開発し、一期的な複数の筋の機能再建が可能となり、顔面神経麻痺(J.Reconstr. Microsurg.,accepted)と腕神経叢麻痺のより複雑な動的再建術が開発された。さらに、これまでの実験結果から得られた結果をもとに、臨床例の陳旧性顔面神経麻痺、完全型腕神経叢麻痺など難治性神経麻痺に対する血管柄付神経移植術を確立した(The 12th International Synposium of Reconstructive Microsurgery,Singapore,Feb.1996にて発表)。これらの新たな神経筋の機能再建術とその臨床応用の成果は、これまで不可能とされていた脊髄損傷後の四肢の知覚・運動機能の回復を目標とした再建術の完成につながる可能性がでてきている。
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