研究概要 |
成熟瘢痕8例、ケロイド4例、肥厚性瘢痕5例の患者血清中TNF-α値をELISA法を用いて測定した。広範囲熱傷後の肥厚性瘢痕患者2症例において高値(60pg/ml, 88pg/ml)を示したが、他のものは全て15pg/ml以下のレベルであった。血清中や局所におけるTNF-αの存在の有無やさまざまな細胞に関しては現在研究されつつあるところである。また局所においてはTNF-αの存在するタイミングも重要である。今回の結果は、低濃度のTNFは創傷治癒を促すが、高濃度では阻害するという考えを支持するものである。 また、in vitro培養系では、P3〜P8 (P=Passage)の培養線維芽細胞において増殖能を比較し、ケロイド>肥厚性瘢痕≧成熟瘢痕≒正常皮膚という結果を得たが、再現性に若干のばらつきがみられた。各瘢痕組織由来線維芽細胞の培養液中のTNF-α値は、各群とも低値で有意差は認められなかった。次にTNF-αとIFN α-2b投与による影響を検討した。TNF投与により正常組織、成熟瘢痕組織由来線維芽細胞では、非投与群に比べ増殖促進効果(濃度依存的)がみられた。しかし、ケロイドと肥厚性瘢痕では、非投与群と有意差は認められなかった。一方、IFN投与群では全ての線維芽細胞の増殖が抑制された。とくにケロイドと肥厚性瘢痕由来線維芽細胞ではその抑制効果が著しかった(ケロイド>肥厚性瘢痕>成熟瘢痕≒正常皮膚)。また、TNFとIFNの併用では、ケロイド由来線維芽細胞の増殖が抑制された。 瘢痕組織由来線維芽細胞におけるコラーゲン・ゲル収縮能では、ケロイドおよび肥厚性瘢痕で強い収縮性を示した。次にこれらの細胞にIFNを投与したところ、全ての細胞においてその収縮が抑制された(濃度依存的)。これらのことは、IFN α-2bが増殖性瘢痕(ケロイド、肥厚性瘢痕)の治療薬の一つになりうることを示唆するものと考えられる。
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