低反応レベルレーザー治療(low reactive-levellaser therapy:LLLT)による疼痛緩和の機序を解明するため、レーザー光照射および組織における一酸化窒素(nitric oxide:NO)産生の関連性について検討した。 実験には新生児ラット遊離脊髄標本を用いた。生後2-3日のラットの脊髄をハロセン麻酔下に摘出し、人工脳脊髄液で灌流した記録チャンバーに固定した。ガラス管吸引電極にて腰髄後根に単発電気刺激(持続500μ秒、強さ50V)を加えると、脊髄同レベル前根より単シナプス反射電位および長時間(2-15秒)持続する電位(slow ventral root potential:slow VRP)が記録できる。このslow VRPの持続時間および電位高は疼痛反応の指標として用いられる。予備実験として、NOの前駆物質であるL-アルギニンおよびNO合成酵素阻害薬であるL-NAME(L-nitro arginine methyl ester)の作用を解析した。これら薬剤がslow VRPを延長もしくは短縮することから、NOはこの標本において疼痛反応を修飾することが示唆されたが、その関与は少ないことが判明した。 光ファイバーの導入により、低反応レベルレーザー光を減弱させることなく微少領域(直径0.5mm以下)に選択的に照射することが可能である。この照射装置を用い、電気刺激される後根に対し選択的にレーザー照射(50mW、連続照射)を行った。照射開始から10分以内にslow VRPの減少が一部の例で明らかになった。この成績よりLLLTの作用機序の一つとして軸索伝導の抑制が示唆された。しかしながら、レーザー光照射に対し無反応な例もあることから、照射時間やレーザー光強度などの照射条件、および、軸索の種類や太さなどの組織特性について更に検討を要する。
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