神経損傷モデルとして、ラット坐骨神経を4回軽く結紮して作成するモデル(Bennettモデル)と、ラット坐骨神経を大腿部で半周結紮するモデル(Seltzerモデル)を用いて検討した。これらのモデルでは、神経損傷後に熱刺激に対して敏感な状態、すなわちthermal hyperalgesiaの状態となる。この状態が、Neuropathic Painのモデルとなると考えられている。神経損傷前に各種の薬物を投与し、その後のthermal hyperalgesia発症の経過を検討することにより、各薬物のPreemptive Analgesia様効果の強さを検討することができると考えられている。 本年度は、YM022(cholecystokinin‐B receptor antagonist)・モルヒネ(μ opioid receptor agonist)・クロニジン(α‐2 receptor agonist)・MK801(NMDA receptor antagonist)を用いて検討した。これらの薬物を、神経損傷前に髄腔内へ投与し、thermal hyperalgesia発症に対する効果を検討した。 Benettモデルでは、クロニジンとMK801はthermal hyperalgesia発症を予防する効果が見られた。一方、YM022とモルヒネではthermal hyperalgesiaの発症に対して、何ら効果がなかった。Seltzerモデルでは、MK801のみしか検討していないが、MK801はthermal hyperalgesia発症予防効果はなかった。 これらのことから、α‐2 receptor agonistとNMDA receptor antagonistがPreemptive Analgesia様の効果を有することが示された。しかしながら、モデルによっては効果がない場合もあることも確認された。従って、今後はどのようなモデルに対しても効果が期待できる、より普遍性のある薬物を探していく必要があろう。
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