研究概要 |
皮膚切開による急性疼痛刺激モデルにおいては,モルモット脳内のμ選択性リガンドの^3H-DAGO,δ選択性リガンドの^3H-DPDPEおよびκ選択性リガンドの^3H-U69593特異的結合において,総受容体濃度(Bmax値)および解離定数(Kd値)ともコントロール群(偽手術群)と有意差を認めなかった.一方,ラット後肢フォルマリン注入による急性疼痛刺激モデルにおいても,上記3タイプの^3H-リガンドを用いて,脳・脊髄内のオピロイド受容体の変動を検討したが対照群(生理食塩水注入)と有意差は認められなかった.また,ラット脊髄において,κ選択性リガンドの^3H-U69593特異的結合はほとんど認められなかったため,κリガンドのproto-typeである^3H-EKCを使用したが,高あるいは低親和性結合部位においても対照群と有意差は認められなかった. したがって,ラットにアジュバンドを接種し、アジュバンド関節炎を引き起こした慢性炎症性疼痛モデル動物を作製し,脳・脊髄内のオピオイド受容体の変動を検討した.しかし,^3H-DAGO結合においてもBmax値およびKd値ともコントロール群と有意差を認めなかった.また,疼痛制御にも関与しているといわれているα2受容体の選択的アゴニストである ^3H-UK14304結合も使用して慢性疼痛刺激を加えたラットの脳・脊髄内のα2受容体の変動を検討したが,痛み刺激によってもα2受容体の変化は認められなかった. 以上のような急性および慢性炎症性疼痛刺激は、オピオイド受容体の変動をきたす程のものではないかもしれない.あるいは,たとえ変動があったにせよ,脳あるいは脊髄全体のオピオイド受容体からみればごくわずかなもので本受容体の変動が認められなかったかもしれない.このように急性および慢性疼痛刺激ではオピオイド受容体の変動が認められずモルヒネ投与による本受容体の変化は検討できなかった.
|