ナトリウムチャネル電流を観測するための標本として、次の2つの方法を試みた。 1.アメリカザリガニの腹部または鋏脚部の筋肉をコラゲナーゼ処理してmyoballを作成し、これにパッチクランプ法を適用してチャネル電流を測定する。 2.ラット脳のホモジネートからmRNAを抽出し、これをアフリカツメガエル卵に注入し、ナトリウムチャネルを発現させる。このツメガエル卵を膜電位固定してナトリウム電流を測定する。 1の方法ではセルアタッチの状態でのチャネル電流が得られるものの、パッチ膜を破ったホールセルの状態のクランプが安定して得られていない。単一ナトリウムチャネルの電流に対する麻酔薬、モノカルボン酸投与の影響を調べるための実験方法を、さらに改良しなければならない。 2の方法ではプロカイン50μMという低濃度でナトリウム電流の消失を観測した。ラット迷走神経ではmMオーダーのプロカインを必要としたことを考えると、神経組織には麻酔薬耐性の機構の存在が示唆される。さらに、モノカルボン酸イオン(プロピオン酸ナトリウム)の存在下では、プロカイン5μMでナトリウム電流はブロックされ、麻酔からの回復も遅れることが確認された。従って、モノカルボン酸イオンによる麻酔増強は、ナトリウムチャネルを構成する蛋白質に対する直接作用であると考えられる。 今後は、上記2つの方法で実験を重ね、モノカルボン酸イオンの麻酔増強作用を調べる。
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