ラットを対象として、下部腰椎間よりクモ膜下腔カテーテルを留置した。これよりプロスタグランディン(PG)E_1(100-500ng)またはF_<2α>(100ng)を投与し、侵害刺激および非侵害刺激に対する反応を検討した。体性侵害刺激としてtail flick試験を、内蔵性侵害刺激としてcolorectal distension試験を用いた。非侵害性機械刺激に対する影響は、3種類のSemmes-Weinstein monofilament(SWM)を用いてラットの左右の頚部、側腹部、殿部の計6ケ所を刺激し、その逃避反応をスコア化することにより検討した。PGEE_1およびPGF_<2α>のクモ膜下腔投与後、体性侵害刺激、内蔵性侵害刺激に対して疼痛過敏が出現した、誘発された疼痛過敏はPGの投与量に依存性であり、またこの効果は一過性で20分から30分間持続した。一方、非侵害性機械的刺激に対しては長時間持続する知覚過敏が誘発された。観察期間は2日間であったが、知覚過敏はこの期間以上に持続するものであった。知覚過敏の程度は投与量に依存しており、さらにSWMの強度にも依存していた。PGF_<2α>による知覚過敏の誘発はPGEE_1のそれに比較し強い傾向にあった。脊髄の染色標本ではPG群と生食群において脱髄等の組織学的所見に差違はなく、PGによる形態的脊髄障害は否定的であった。PGF_<2α>のクモ膜下腔投与後の体性侵害刺激または内蔵性侵害刺激に対する一過性の疼痛過敏はモルヒネ(1-10μg)またはバクロフェン(0.1-1.0μg)の前処置により抑制された。一方、非侵害性機能的刺激に対する持続性の知覚過敏はモルヒネによる前処理では一過性に抑制されのみであったが、バクロフェン前処理では長時間持続性の抑制が認められた。知覚過敏抑制の程度は投与量に依存しており、さらにSWMの強度にも依存していた。
|