研究課題/領域番号 |
06671529
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中木村 和彦 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (50180261)
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研究分担者 |
佐野 隆信 山口大学, 医学部附属病院, 助手 (40243670)
石川 敏三 山口大学, 医学部, 助手 (90034991)
坂部 武史 山口大学, 医学部, 教授 (40035225)
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キーワード | 急性硬膜下血腫 / NMDA受容体拮抗薬 / 脳障害 / ラット |
研究概要 |
ラットの急性硬膜下血腫モデル(血腫量150μl)を用いて、以下の治療に対する反応性を検討した。 血圧の影響を検討するため、ハロタン麻酔時、平均動脈圧を80mmHgに維持したときとドパミンにより100mmHgに維持したときの予後と神経学的所見を検討した。その結果、頭蓋内圧変化は両群間に差がなく、ともに30-40mmHgまで上昇したが、平均動脈圧の違いから脳環流圧(=平均動脈圧-頭蓋内圧)は、ハロタン単独群が40-70mmHgであったのに対し、ハロタン麻酔下ドパミン投与にて血圧を高めに保った群(ハロタン+ドパミン群)では80mmHg以上に維持された。両群ともに血腫作成後30分-1時間後に気管内チューブを抜去し、気管内チューブ抜去後1-2時間はラットの活動性が回復したが、その後多くのラットが傾眠傾向となり、血腫作成後15-50時間に、ハロタン単独群では11匹中10匹が、ハロタン+ドパミン群では11匹中5匹が死亡し、4日以降の神経学的所見はハロタン+ドパミン群が有意に良好であった。ハロタン+ドパミン群の予後と神経学的所見は、同程度の平均動脈圧と頭蓋内圧を示したイソフルラン麻酔での硬膜下出血腫後の予後と神経学的所見とほぼ等しかった。以上より、麻酔薬の違いよりも、脳環流圧を維持する方がより重要であることが示された。 その他、血腫直後よりガベキサートメシル酸塩(FOY^R)を1、10、または50mg/kg/時の速度で投与して治療効果を検討したが、対照群と比べて梗塞範囲に差は認められなかった。 また、NMDA受容体の非競合的拮抗薬であるMK-801とケタミンを血腫作成30分後より投与し、これらの治療効果を検討した。MK-801投与群にのみ梗塞範囲の縮小傾向がみられたが、個体差が大きく有意ではなかった。 以上より、急性硬膜下血腫に対するNMDA受容体拮抗薬の有効性が示唆された。また、多くの薬物治療と同等かそれ以上に、まず、脳環流圧を維持することの重要性が示された。
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