研究概要 |
冠動脈の血管内皮細胞は、一酸化窒素(nitric oxide:NO)の他に、血管内皮由来過分極因子(endothelium-derived hyperpolarizing factor:EDHF)を放出して冠動脈を弛緩させ心筋の血流量を調節している(中島幹夫、1995)。 このEDHFによるイヌ冠動脈の弛緩反応を検討する前段階として、我々は先ず、ウサギ腸間膜動脈において数々の吸入麻酔薬が内皮依存性弛緩反応に与える影響について調べた。その結果、イソフルレン、セボフレン、およびエンフルレンの各吸入麻酔薬は、NOによる血管弛緩反応を抑制するほか、NO阻害薬の存在下で認められる内皮依存性弛緩反応(主にEDHFによる弛緩反応)も抑制することがわかった(Akata et al,1995)。 これらのことから、吸入麻酔薬が動脈の血管内皮細胞を非特異的に抑制しEDHFの放出を抑制しているのか、あるいはEDHFの放出には影響を与えず平滑筋自体の弛緩反応を抑制しているのかが次の問題となった。今後は、同様の実験をイヌ冠動脈を用いて行い、ハロセンによってEDHFによる弛緩反応と同時に弛緩反応も抑制されているか否かについて検討を行う予定である。
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