研究概要 |
平成6年度-7年度の研究において、SD系雌ラットの妊娠経過に伴い、妊娠末期(分娩直前)に誘導される内因性鎮痛が、Calcium channel blocker verapamil 100μgおよび200μgのくも膜下投与は体性侵害刺激(tail-flick test)に対し用量依存性に鎮痛効果を発揮することを報告した。平成7年度から8年度の研究では、更にこの効果および機序を解明することを目的とした。 妊娠SD雌ラットのCalcium channel blocker verapamil 100μgおよび200μgくも膜下投与前後のtail-flick testに対する疼痛域値を分娩後7日にも検討した。妊娠21日(分娩直前)に認められたverapamilくも膜下投与による%maximum possible effect(%MPE;(post-drug latency-baseline latency)/(cut-off time-baseline latency)x100)の上昇(40-50%)が、分娩後7日ではverapamil投与前後で妊娠前、妊娠7日、妊娠14日と同様に疼痛域値の上昇を認めなかった。以上より、くも膜下に投与されたCalcium channel blocker verapamilの疼痛域値に及ぼす影響は妊娠および分娩の経過と密接な関係があることが判明した。 更に、Calcium channel blockerの局所麻酔薬との相互作用をラットにて検討した。 雄ラットの尾根部に投与した局所麻酔薬リドカインおよびプロカインの局所麻酔作用に及ぼす各種(verapamil,diltiazem,nicaldipine)Calcium channel blockerの影響は局所麻酔の単独投与に比較して、各種(verapamil,diltiazem,nicaldipine)Calcium channel blockerの混合投与は用量依存性に%MPEを上昇させることが判明した。 以上より、妊娠に伴い誘導される内因性鎮痛にくも膜下に投与されたCalcium channel blockerは妊娠末期にのみ増強的に作用がすることが示された。また、Calcium channel blockerは末梢神経においても局所麻酔薬の作用を増強させることが示され、今後、分娩時の疼痛管理や疼痛患者での神経ブロックにおいて、Calcium channel blockerの併用が疼痛管理に有用となる可能性が示唆された。
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