研究概要 |
妊娠末期にはエンドルフィンなどの内因性鎮痛物質の関与が示唆されている。一方、くも膜下に投与されたモルヒネの鎮痛効果がカルシウムチャンネル拮抗薬Verapamilにより増強されることを平成5年度-6年度の科学研究(一般研究C;課題番号04670935)において報告してきた。今回の平成6年度-7年度の研究にては妊娠後期に誘導される内因性鎮痛に対するカルシウムチャンネル拮抗薬の増強効果を中心に研究を行い、以下のことが判明した。(1)脊髄レベルで局所麻酔薬とカルシウムチャンネル拮抗薬との相互作用をMale Sprague-Dawley ratsにて、Tail-flick testおよびMechanical paw pressure testを用いて検討した。くも膜下に投与されたLidocaine(20,50,100および200μg)またはTetracaine(10,20,50および100μg)とカルシウムチャンネル拮抗薬Verapamil(50μg)の同時投与は、これら2種類の局所麻酔薬の作用を相乗的に増強させることが判明した(Anesth esilogy 1995;80;444-448)。(2)末梢神経レベルで高所麻酔薬とカルシウムチャンネル拮抗薬との相互作用をMale Sprague-Dawley ratsにて、Tail-flick testを用いて検討した。ラットの尾の両側に投与されたリドカインおよびプロカインの局所麻酔作用は、カルシウムチャンネル拮抗薬Verapamil、Diltiazem,およびNicardipineの同時投与により用量依存性に増強されることが示された(British Journal of Anaesthesia1996;76;in press)。(3)これまではL-typeのカルシウムチャンネル拮抗薬との相互作用を検討してきたので、次に神経伝達において重要な役割を果たしていることが知られてきたN-typeのカルシウムチャンネル拮抗薬と局所麻酔薬との相互作用をTail-flick testおよびMechanical paw pressure testを用いて検討した。N-typeのカルシウムチャンネル拮抗薬ω-conotoxin GVIA(ω-CgTx)もL-typeのカルシウムチャンネル拮抗薬と同様にくも膜下に投与されたモルヒネの鎮痛効果を増強させた(Anesthsiology 1996;84;in press)。(4)妊娠後期における内因性鎮痛に対するL-typeのカルシウムチャンネル拮抗薬の効果をTail-flick testを用いて検討した。Verapamilくも膜下投与前のTail-flick testの潜時は妊娠7日および14日では3-4秒であったが、妊娠21日(通常22日目に出産)には5-6秒となり、Verapamil200μgくも膜下投与により%maximum possible effectsは約50%増強された(Journal Anesthesia 1995;9;A156)
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