研究概要 |
前年度同様に、ラットまたはモルモットの妊娠子宮から子宮平滑筋標本を取り出して、酸素化したKrebs-Henseleit溶液で満たした器官槽に懸架しその張力の変化を測定記録した。 摘出子宮筋は、標本により自律的収縮が強いものも弱いものもあり、一定の収縮状態を得られるようにオキシトシンやPGF_2αや高K^+溶液を用いたが、安定した状態を得ることはできなかった。薬物の影響としては、β-アドレナリン受容体刺激薬、カルシウムチャンネル阻害薬が著明に収縮を抑制した。吸入麻酔薬のイソフルレンは子宮収縮に影響を及ぼさなかった。低酸素状態では収縮は抑制傾向が見られた。温度変化に対しては低温で自律的収縮の頻度の減少が、復温により収縮の抑制〜停止が見られ、温度は子宮収縮に影響する大きな因子と思われた。 年度後半は、当初の計画にあったように,in vivoの実験に進んだ。妊娠後期(妊娠17〜20日)のラットを用いた。エーテル麻酔下にペントバルビタールを静注し、気管切開後に人工呼吸をした。頸静脈または尾静脈を確保し、投薬路とした。頸動脈にカニュレーションし持続的に血圧をモニターした。下腹部を切開し子宮内に一胎胞を摘出したところに自作したバルーンを留置しその内圧を子宮内圧としてモニターした。子宮は概ね数mmHgの内圧を周期的に示した。dopamine,OPC18790,methoxythamine,ephedorineによる内圧への影響はなく、高濃度のdobutamine,ritodorine,isoproterenol,nicardipineにより抑制が見られた。ハロセン、イソフルレンでは循環抑制が強く子宮内圧への影響は認められなかった。 in vivoの今回の実験系で多くの有用な情報が得られることが判明した。この小動物による妊娠子宮の反応の評価法は有用であり、今後の研究を進める上で、妊娠ラットにいかに安定した測定状態を作れるかが、重要であると思われた。
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