研究者らはまず、全身と腹部臓器におけるにおける酸素代謝を、雑種成犬を用いて評価した。各臓器別にOxygen extractionを算出することにより酸素運搬面からみた腹部臓器の低灌流ストレスに対する耐用性について検討した。その結果、肝臓における酸素抽出能は平常時においては16%と全身の24%に比して低いのに対し、低灌流状態においては飛躍的に増大しCritical oxygen extractionは91%に達し極限まで酸素抽出を行なう特性があることが判明した。一方で消化管におけるCritical oxygen extractionは56%であり、低灌流状態における酸素抽出能が非常に悪く、酸素の取り込み障害が発生していることが推察された。以上の結果は腹部臓器内においても肝臓と消化管では酸素代謝に大きな差異が存在し、酸素代謝面から見ると肝臓は低灌流ストレスに強く、一方で消化管は比較的弱い臓器であり、ショック時におけるTarget organになりうると類推できる。引き続いて現在、大腸菌エンドトキシンを用いて臨床病態に近似したエンドトキシンショックモデルを作成し、この場合における腹部臓器の酸素運搬能の変化を解明中である。 一方で、テルモ社製連続血流測定用カテーテルを用いた肝血流の連続測定を試み、第41回日本麻酔学会において報告した。本法により肝静脈血流の急性変化を相対的に把握することができ、肝静脈血酸素飽和度とあわせて肝臓の酸素代謝の連続測定が可能であると考えられ、臨床応用に関して現在検討中である。
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