研究概要 |
^3H‐Arginineが一酸化窒素合成酵素(Nitric Oxide Synthase:NOS)の作用で^3H‐Citrullinに変換されることを利用して,ヒト前立腺腺腫のNOS活性を前立腺肥大症標本(PH)と正常標本(NPH)とで測定し,両群での差異について検討した.NOSを抽出する段階で,標本をホモジナイズし遠心分離で得られた上清と沈渣の両者について活性を測定した.また^3H‐Arginineとの反応条件でCalmodulinの有無がNOS活性に影響するか否かについて検討した. その結果,前立腺肥大症腺腫の上清と沈渣の両者で有意なNOS活性が検出された.上清のNOS活性についてPH群,NPH群での差異は認められなかったが,沈渣のNOS活性はPH群がNPH群に比して有意に低下していた.Calmodulinの有無の影響では沈渣のNOS活性は影響を受けなかったが上清のNOS活性は著明に低下した. 以上のことから次のような結論を得た. 1.ヒト前立腺には,Calmodulinを必要とするNOSとCalmodulinを必要としないNOSととに大きく二つに分けられるNOSが存在する.前者はsoluble NOS,後者はendothelial NOSであると推測された. 2.前立腺肥大症では前立腺腺腫のsoluble NOSには変化は見られなかったが,endothelial NOSが有意に低下している.このことから,NOS活性の異常が前立腺肥大症の病態に何らかの形で関与していることが推測された.
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