研究概要 |
臨床材料の尿路移行上皮(膀胱,尿管)癌を対象に、細胞分裂能に関与するとされるテロメラーゼ活性と、浸潤・転移能に関与するとされる膜型マトリックスメタロプロテアーゼ活性とについて検討を行った。 (1)テロメラーゼ活性 無制限に細胞分裂をくり返す癌細胞においては、正常有核細胞には検出されないテロメラーゼ活性が亢進しており、テロメアの短縮が起こらず、細胞の不死化につながっていることが解明されてきた。今回、尿路移行上皮癌を対象に、PCR-based telomeric repeat amplification assayを用いて、テロメラーゼ活性の解析を行った。正常組織からは1例もその活性が検出されなかったのに対し、22例の癌組織からは、活性値の差はあるものの全例に検出された。しかし、病理学的悪性度や臨床病機との相関は認められなかった。 (2)膜型マトリックスメタロプロテアーゼ活性(MT-MMP, type1,2,3) 癌細胞の局所浸潤に重要な役割を果たすMT-MMPの発現について、RT-PCRおよび免疫染色による検討を行った。癌、正常いずれの組織においてもtype3のMT-MMP発現は低く、有意差はなかった。type1およびtype2のMT-MMPは、癌組織で有意に高い発現が認められ、単発性腫瘍に比べ、多発性腫瘍で有意に高く発現していた。さらにtype1のMT-MMPは表在性腫瘍に比べ、浸潤性腫瘍で有意に高い発現を示した。
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