研究概要 |
前立腺器官培養法の確立とアンドロゲンと増殖因子の作用を形態的および生化学的に検討した。生下時(生後1日)のラットの腹葉(ventral prostate)を用い、フイルターの上に置き無血清培養液(DMEM/HamF12,insulin,transferinを含む)にて、器官培養を6日行った。テストテロンおよびデヒドロテストステロンを含まない培養条件ではほとんど腺管分枝形態発生は認めなかったが、テストテロンにおいては10-8Mデヒドロテストステロンでは10-9Mが至適濃度と考えられ、それぞれ濃度依存的に著しい2次元的な腺管分枝形態発生を促した。この腺管構造の分枝発生を検討する目的で、それぞれの培養組織の画像をテレビカメラ付き顕微鏡によりコンピュータに取り込み、特に間質の面積および上皮腺管の面積を形態測定した。また、本研究法の特色でもある腺管分枝構造の形態発生は、2次元的にフイルター上で成長した組織の画像解析から分枝端の数を測定したが、Epidermal growth factor(EGF)は前立腺増殖をうながすものの腺管分枝形態発生に関与せず,Keratinocyte growth factor(KGF)は、正常に近い前立腺形態発生を促した。 このようにEGFおよびKGFは前立腺増殖を促進させるが、特にKGF投与はアンドロゲン非存在下において、ほぼ正常のDNA量および分枝形態発生の73%の増殖を促した。以上よりKGFは、間質の繊維芽細胞から分泌されその作用は上皮細胞にのみ働くことから、アンドロゲン作用が上皮-間質の細胞間における成長因子を介した間接的な作用機構により前立腺形態発生をうながす機構が示唆された。
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