研究概要 |
昨年度は,ラット前立腺の無血清器官培養法を確立したが,本法を用いさらに増殖因子の前立腺形態発生に及ぼす役割を検討した.とくに,keratinocyto growth factor(KGF)の役割を分子生物学的に検討を加えた結果,1)テストステロンにより促進された前立腺管形態発生は,KGFの中和抗体によりほぼ完全に抑制された,2)KGFがRT-PCR法により生直後のラット前立腺および器官培養した前立腺に認められ,またKGFの受容体もRT-PCR法も同様に確認された.また,3)in situ hybridization法によりKGFの受容体はラット前立腺の上皮細胞にのみ発現していることも確認された.以上より,昨年度に想定されたアンドロゲンによる前立腺発生増殖機構において,KGFを介した上皮-間質の細胞間相互作用が分子レベルであきらかになった.すなわち,アンドロゲンは前立腺間質細胞のアンドロゲン受容体に結合しKGFを分泌させ,KGFはKGF受容体を持つ前立腺上皮細胞に働き,増殖および形態発生を促す可能性を示唆する結果が得られた. さらに本年度は,マウス前立腺においても同様の器官培養による増殖因子および性ステロイドの作用を検討した.マウス前立腺は、テストステロン(T)を含まない培養条件ではほとんど腺管分枝形態発生は認めなかったが、T(10^<-8>M)含む培養条件では、著しい2次元的な腺管分枝形態発生を認めた。しかし,KGFはマウスにおいては腺管分枝を促進させず腺管の腫大を誘導したのみであった。また,適性下限濃度のT(10^<-10>M)にエストロゲンを加えると腺管構造の分子発生において協調的に作用することが示された。今後更に,アンドロゲンによる前立腺形態発生における性ステロイドホルモンおよび増殖因子の作用解明が必要と考えれた.
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