研究課題/領域番号 |
06671586
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
筧 善行 京都大学, 医学研究科, 講師 (20214273)
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研究分担者 |
水谷 陽一 京都大学, 医学研究科, 助手 (10243031)
小川 修 京都大学, 医学研究科, 助手 (90260611)
寺地 敏郎 京都大学, 医学研究科, 講師 (50207487)
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キーワード | 尿路上皮癌 / 尿中剥離細胞 / 尿路腔内播種 / p53 / 分子診断法 |
研究概要 |
尿路上皮癌患者の自然排泄尿中の剥離細胞の短期培養系で得られた細胞に対し、抗p53単クローン抗体を用いた免疫細胞化学を行い、実際の腫瘍でのp53に対する免疫組織化学の結果と比較した。短期培養成功率はp53陽性患者では90.1%と陰性群の61.3%に比し有意に高かった。さらに腫瘍組織と尿中剥離細胞の短期培養でのp53の染色結果は92.1%と高い一致率を示し、この短期培養系が尿路上皮癌患者、とりわけ再発や悪性進展の危険度の高いp53遺伝子異常を有する患者群に対する非侵襲的な診断方法として有用であることが示唆された(第54回日本癌学会総会発表、Jpn J Cancer Resへ投稿中)。尿中剥離細胞に含まれるp53異常を有する腫瘍細胞を検知するため、短期培養系で得られた細胞や尿沈査細胞由来のDNAに対し、変異塩基特異的プライマーを作成し変異を有するDNA断片のみを特異的に増幅する遺伝子診断法の開発を試みている。現在までに予備実験を終え実験条件の確立がほぼ達成され、p53陽性の4症例において尿沈査細胞DNAで変異特異的増幅に成功している(第84回日本泌尿器科学会総会発表予定)。現在までに尿路腫瘍患者120名余りの尿中剥離細胞の短期培養を試みたが、腫瘍のgradeやstageと培養成功率とは有意な差はなかったが、腫瘍の位置に関しては興味ある事実が認められている。すなわち上部尿路(腎盂・尿管)腫瘍患者の短期培養成功率は100%(15/15)で下部尿路腫瘍である膀胱腫瘍患者の65%に比し有意に高い(第54回日本癌学会総会発表、投稿準備中)。この結果は、上部尿路腫瘍が腫瘍細胞の尿路腔内播種に関して下部尿路腫瘍より高いポテンシャルを有する可能性を示唆している。p53異常を有さない尿路上皮腫瘍の本培養系での検知を目的として、Fukudaらが報告した癌細胞の核DNAの不安定性をacridine orangeにより蛍光染色にて識別する方法を用い、有腫瘍患者でのみ陽性となる実験条件の確立に成功した(第84回日本泌尿器科学会総会発表予定)。今後この手法の臨床応用について引き続き検討する。
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