研究概要 |
大腸菌線毛およびセラチア線毛の遺伝子解析を行い、線毛の種類、および線毛構造の異なる、遺伝子変異株を作成し、腎盂腎炎の発症および腎瘢痕形成に及ぼす、細菌側要因の研究を行った。その結果、大腸菌およびセラチアのMS線毛のAdhesinは細菌線毛先端に存在し、そのAdhesinは白血病のSuperoxide産生を強く刺激した。さらに、MS線毛保有細菌はMR線毛保有細菌に比し、実験腎盂腎炎における腎瘢痕形成能が強かった。このことから、MS線毛の先端に存在するAdhesinが白血球の活性酸素産生を強く刺激し、腎瘢痕形成に繋がるものと考えられた。また、実験腎盂腎炎後の瘢痕形成予防効果が活性酸素消去剤のEbselenや抗炎症剤のSteroid, Ulinastainなどにあることが明らかとなった。さらに、抗菌剤と抗酸化剤や抗炎症剤の併用が良いことを実験的に見い出した。一方、腎実質は高浸透圧状態であり、、多核白血球の機能障害が見られ、腎盂腎炎の発症の原因の一つとなっている。我々の検討では、腎の高浸透圧の原因となるNaと尿素の白血球機能抑制のメカニズムを検討した結果、NaはATP量と関連し、細胞構成維持のためのエネルギー代謝と関連し、細胞内諸酵素、特に、NADPHoxidaseには影響しなかった。また、尿素は白血球内諸酵素に対する直接作用によった。従って、尿路感染症治療の効率化には、抗菌剤と白血球の相互作用が必要となる。このような観点から、各種薬剤の白血球機能への影響を検討したところ、ニューキノロン剤のなかで、オフロキサシンとレボフロキサシン、フレロキサシンに白血球機能増強作用のあることが、判明した。
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