研究概要 |
水腎症における腎カリクレイン-キニン系の役割について研究する目的で下記の実験を行った。 1.後天性水腎症モデルとして10週のWistar系雄性ラットを用い、左尿管に対して下記のような片側性水腎症モデルを作製した。 A群:完全閉塞、B群:部分的狭窄、C群:偽手術 2.急性期の実験として術後1、7日目に開腹し、分腎尿を採取後、両側腎摘出を行い、水腎症の程度を評価分類した。 3.採取した尿は直ちに遠沈後、上清を-80度に凍結保存した。 4.摘出した腎は直ちに皮質を約100mg採取し、0.1M Tris-HCL bufferで調整した1%トリトン液でhomogenizeした。0度C 3000rpm 20分間遠沈後、上清を-80度に凍結保存した。 5.尿および腎組織カリクレイン活性はChromogenic tripeptide substate(第一化薬S2266)を用いて、分光光度計にて405nmでの吸光度を求めカリクレイン活性を測定した。 以下のような結果を得た。 1.術後1日目の腎にはABC群ともに形態的有意な変化を認めなかった。 2.術後1日目の尿および腎組織カリクレイン活性に有意な差は認められなかった。 3.術後7日目の腎ではA群は大部分に腎盂の拡大を認めたが、B群においては水腎症の程度にばらつきが多かった。 4.術後7日目のA群の尿および腎組織カリクレインは右17.1±10.6nkat/day,2.2±0.7nkat/g 左24.5±17.8nkat/dal,2.9±1.2nkat/g,C群は右16.9±8.6nkat/day、3.1±0.7nkat/g,左17.5±8.9nkat/day,2.7±0.9nkat/gであったが、B群についてはnが少なく追試中である。 以上より、完全閉塞の場合にはカリクレイン活性は増加する傾向が示唆された。しかし、B群については一定の傾向を見い出すには至っておらず、Ulm and Miller法による尿管の部分的狭窄の作製方法に若干の工夫が必要と思われる。
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