水腎症における腎カリクレイン-キニン系の役割について研究する目的で下記の実験を行った。 1 片側性水腎症モデルとして8週のWistar系雄性ラットを用い、エーテル麻酔下に開腹し、左尿管下端を2-0絹糸にて吊り上げ皮膚にに固定し尿管を完全閉塞させ左水腎症を作成した(片側性水腎症群)。48時間後に固定していた絹糸を除去し閉塞を解除した。偽手術として左尿管の剥離のみを行った(コントロール群)。 2 手術前日より術後7日間まで毎日24時間蓄尿を行った。24時間尿量を測定後遠沈し上清を-80度Cに凍結保存した。採取した尿についてMCA蛍光法により尿中カリクレインを測定した。以下のような結果を得た。1)術前の尿中カリクレインはコントロール群、片側性水腎症群それぞれ1.739、1.912U/dayで有意差は認めなかった。2)手術後1日目ではそれぞれ1.188と0.609U/dayと片側性水腎症群で低下していた。3)手術後7日目ではそれぞれ0.955と1.156U/dayと片側性水腎症群の方が若干高かった。 3 下部尿路通過障害による両側性水腎症モデルとして8週のWistar系雄性ラットを用い、エーテル麻酔下に開腹し、膀胱頸部を2-0絹糸にて吊り上げ皮膚に固定し尿道を完全閉塞させ両側性水腎症を作成した。24時間目(A群)および48時間目(B群)に固定していた絹糸を除去し閉塞を解除した。偽手術として膀胱頸部の剥離のみ(C群)を行った。 4 上記と同様に尿中カリクレインを測定し、以下のような結果を得た。1)術前の尿中カリクレインはA群B群C群それぞれ1.235、1.210、1.455で有意差は認めなかった。2)手術後7日目ではA群B群C群それぞれ1.272、0.318、0.955で、B群で有意に低下していた。以上から片側性の場合や閉塞時間が短い場合には尿中カリクレインは上昇する蛍光が認められるが、閉塞時間が長くなると低下することが示唆された。
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