研究概要 |
ポーリン蛋白(Omp)をワクチンとした家兎実験的賢盂腎炎の予防効果を検討し,接種菌量が少なければ効果の認められることが確認された。そのメカニズムは抗Omp-IgG抗体が,他の免疫系と協力的に働き,オプソニン効果を発揮しているものと推測された。 In vitroカテーテル感染モデルならびに家兎カテーテル感染モデルを用いて,尿中における各種抗菌薬のバイオフィルム緑膿菌殺菌効果を検討した。検討した薬剤のなかでもっとも殺菌効果の高い薬剤ニユ-キノロン薬であったが,臨床的な実情(緑膿菌の耐性化傾向,到達可能な薬剤の尿中濃度)を勘案すると,ニューキノロン薬でも留置カテーテルに合併した緑膿菌尿路感染症で治療効果期待できる症例は半数程度と考えられた。抗菌薬の併用でも,相乗作用が明確な一定の薬剤の組み合わせは認められず,呼吸器感染例では有効とされるマクロライド薬の併用も,今回の実験系ではその有用性を明確にすることはできなかった。 性器感染モデルの作成を試みた。精巣上体炎は家兎精管内に,前立腺炎はラット尿道内に大腸菌,または緑膿菌の菌液を注入することにより作成可能であるが,精巣上体炎が成立を確実にするためには,菌液注入後に24時間の精管結紮が必要であった。ラット前立腺炎の作成時には,抗菌薬の前投与により尿道常在菌の混入,腎盂腎炎の合併を防止可能となった。これら動物感染モデルは,性器感染症の病態,治療の研究に有用と考えられる。
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