研究概要 |
膀胱癌の病理像と核内型癌遺伝子のc-myc、及び癌抑制遺伝子であるRB、あるいは増殖因子TGF-β1の遺伝子との相関をNorthern blot法でのmRNAの発現との相関として検討した。膀胱癌の新鮮な組織より得られたRBのmRNAの発現は40例中12例(30%)において消失しており、またRB proteinに対する抗体を使用した免疫組織染色においても染色されなかった。またc-myc,TGF-β1遺伝子の過剰発現が40例中それぞれ20例(50%),16例(40%)に見られた。さらにRB遺伝子発現の消失を腫瘍の悪性度別に検討すると、Low Gradeの腫瘍23例中1例(4%)に対してHigh Grade腫瘍では17例中11例(65%)であり、RB遺伝子発現の消失は有意にHigh Grade症例で多かった。c-myc遺伝子の過剰発現はLow Gradeで23例中10例(43%)でHigh Gradeで17例中10例(59%)であり、有意差はなかった。また、TGF-β1の遺伝子の過剰発現はLow Gradeで23例中11例(48%)であり、High Gradeでは17例中5例(29%)とやや少なかったが有意差はなかった。それぞれの遺伝子発現と腫瘍の浸潤度との相関を検討したが、特に、有意差は存在しなかった。しかし、Low Grade,Low Stageの群とHigh Grade,High Stageの群を比較すると、RB遺伝子発現の消失はLow Grade,Low Stage群18例中1例(6%)であるのに対してHigh Grade,High Stage群11例中7例(64%)と有意に高頻度で認められた。さらに、TGF-β1遺伝子やp53など他の抑制遺伝子との相関等に関しても解析中であり、また遺伝子導入実験についても準備中である。
|