研究概要 |
我々は第一段階として腎癌患者47症例について癌及び正常部よりDNAを抽出し,SSCP法・シークエンス法にてVHL癌抑制遺伝子の変異について解析を行った。その結果47例中22例の腎癌でこの遺伝子のシークエンスレベルでの異常が確認された。またサザンブロット法でこの遺伝子のヘテロ接合性の消失(LOH)について調べたところ25例中17例にてLOHを確認した。しかもこれらの変異は淡明細胞型(Thoenesの分類による)の腎癌にのみ認められた。以上第一段階の結果からVHL癌抑制遺伝子は散発性の淡明細胞型の腎癌の発生進展に重要な働きをしていることが推定された。一方非淡明細胞型の腎癌では解析症例が7例と十分ではないが,VHL遺伝子の変異は全く見られなかった。そこで今回腎癌症例数を新たに163例追加し合計210例にてVHL遺伝子の変異解析を行った。現在SSCP法がほぼ終了したが,約120例でSSCPのバンドシフトが認められており,現在これらの症例についてシークエンスを行い遺伝子の変異を確認している。さらに診断,治療法の開発に役立つような良い実験モデル系を確立する為に腎癌細胞株16例におけるVHL遺伝子の変異解析を行い,3例で遺伝子変異を確認した。今後これらの細胞株を用いてVHL遺伝子産物の機能解析を行っていく予定である。
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