研究概要 |
動物実験においては、当初100匹でスターとした実験が麻酔の影響で最終的に84匹となった。肉眼的には生理食塩水の膀胱内注入はいずれの時期においても膀胱腫瘍、前癌病変に対してプロモーション作用を示した。病理組織学的にはBCGを早期(予防的)に投与した群において膀胱癌の発生率、個数ともに生理食塩水を早期に投与した群よりも低値を示した。以上より、BCG膀胱内注入療法はラットにおいては予防的な目的では効果があると思われた。一方、生理食塩水の膀胱内注入はラットにおいて膀胱発癌をプロモートする事が再確認され、BCGの溶解液として一般に使用されている生理食塩水の妥当性について検討の余地がある事が示唆された。 臨床的には、表在性膀胱癌患者でBCG膀胱内注入療法を施行した患者23名につきその施行前の生検材料を採取し、p16/MTS1遺伝子の突然変異の有無をexon1,2,3についてPCR-SSCP法で、その発現をRT-PCR法で検索した。その結果、いずれの膀胱癌患者においてもp16に突然変異は認められなかった。しかし、7例で明らかな発現低下が認められ、転写レベルでの発現抑制が膀胱癌に関与していることが示唆された。 また、当科でこれまでに施行した表在性膀胱癌患者に対するBCG膀胱内注入療法例79例中、再発した19例に対して、ホルマリンブロックを用いて、p53、PCNA、bc1-2の抗体を用いて免疫組織化学染色を行い、BCG非再発例と比較検討を行った。その結果、p53陽性例は再発例:非再発例=11/19:10/19とほぼ同様の傾向であり、PCNA陽性例は再発例:非再発例=4/19:7/19、bc1-2陽性例は再発例:非再発例=8/19:14/19と両者共に再発例に陽性例が少ない傾向であった。
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