排尿障害を解明するため、終日ウロフローメトリを54人で行った。日内変動について集中的に解析した。従来前立腺肥大症での夜間頻尿は、肥大腺腫の膀胱刺激症状とされてきた。この夜間頻尿の原因は肥大腺腫によるというより、むしろ一般的な夜間尿量の増加によるものと考えられた。 54人は、他疾患で入院した排尿障害の訴えのない患者、前立腺肥大症患者、前立腺癌の3群からなる。年齢で中年、高年、老年の3群に分けた。前立腺肥大症、癌では前立腺の大きさを鶏卵大、同以上、同以下の3群に分けた。 1日の尿量の合計は、各年代で差がなかった。1日の排尿回数は加齢とともに増加した。すなわち1回排尿量は、加齢で減少した。夜間では昼間に比し、すべての年代で一回排尿量が増加していた。昼間と夜間の1回排尿量の比では、むしろ加齢とともに増加傾向があった。夜間の尿の産生は、夜間に排尿された尿量で代用したが、これは、加齢とともに増加が著しかった。 夜間排尿回数は、夜間尿量と相関した。夜間一回排尿量と負の相関を示した。夜間排尿回数は前立腺の大きさとの関係を認めなかった。前立腺肥大症の程度は最大尿流量率の低下や手術の有無でも推定できるが、このような指標とも関係がなかった。ただし、無関係であることを明確にするにはさらに多くの症例数が必要であると考えられた。 αブロッカー投与により、最大尿流量率の増加などを確認したが、MFRや一回排尿量の日内変動にも変化がみられた。手術、肥大症や癌に対する薬物療法での変化の詳細は継続して解析中である。 本研究の目的の一つは、侵襲的な検査法を終日ウロフローメトリなどの非侵襲的な方法で代用する可能性をさぐることにもある。同一患者の残尿期と非残尿期の尿量MFR曲線を比較するとパターンの違いが認められ、残尿状態が否か判断ができる可能性も示された。
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