研究概要 |
ヒト移植腎の拒絶反応に、実際にどのようなT細胞集団が動員されるのかを検索するため、腎浸潤T細胞が表現しているT細胞抗原レセプター(TCR)β鎖cDNAの塩基配列決定を行った。移植後、拒絶され摘出を余儀なくされた腎2例から、コラゲナーゼ処理、パーコール比重遠心法により浸潤リンパ球を分離し、さらに抗CD25抗体と免疫磁気ビーズを用いてCD25^+活性化T細胞画分を得た。mRNA分離およびcDNA合成後、PCR法で増幅したTCRβ鎖cDNAをベクターに組み込み、バクテリアによるクローニングの後塩基配列決定を行った。1例目の拒絶腎浸潤T細胞については、31個のTCRβcDNAを無作為に選んで塩基配列決定を行った結果、CDR3配列も全く同一のcDNAが、Vβ6.9-Jβ1.2で6個、Vβ3.1-Jβ2.1で3個、Vβ3.1-Jβ2.7,Vβ5.6-Jβ2.5,Vβ12b-Jβ2.3で2個ずつ検出された。2例目の拒絶腎浸潤T細胞については、無作為に選んだ36個のTCRβ鎖cDNAのうち、CDR3配列も同一のcDNAは、Vβ17.1-Jβ2.2で17個(全体の約半数)、Vβ5.2-Jβ2.5で2個検出された。この症例については、患者末梢血T細胞についても同様の解析を行ったが、このような偏りは検出されなかった。また我々は以前、in vitro MLRに動員されるTCRの解析を行い、その場合30個前後のcDNA解析では、CDR3配列が同一のcDNAはほとんど検出されないことを示した(ポリクローナリティー)。それに対し本研究では、in vivoでの移植腎拒絶反応には、極めて限られたT細胞クローンが動員されることが明かとなった。(オリゴクローナリティー)。
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