研究概要 |
昨年度解析した移植拒絶腎浸潤T細胞のうち1例は、極めて著しいオリゴクローナリティーを示した。すなわち、無作為に選んだ35個のTCRβ鎖cDNAのうち,Vβ17.1-Jβ2.2でCDR3配列も同一のcDNAが17個(全体の約半数)検出された。今年度は、この1例についてさらに確認のためsingle cell解析を行った。まず浸潤細胞に抗CD25抗体と免疫ビーズを作用させて、顕微鏡下でCD25^<+-> single cellsを25個拾った。single cellsからmRNAを分離し、random primerにてcDNAを合成後、Vβ17特異的primerを用いたPCRを行って、各single cellsがVβ17を表現しているか否かを検証した。その結果,6個のsingle cellsがVβ17表現T細胞であることがわかった。さらにその増殖産物をゲルから回収し、塩基配列を決定したところ,6個のうちの5個が同一のCDR3配列を有することが確認された。また,CD4/8特異的primerを用いてPCR解析を行った結果、上述の同一CDR3配列を有する5個の細胞中3個がCD8陽性細胞と考えられた。(残りの2個がCD4-/CD8-を示したのは検出感度の限界のためと考えられる。)これらの結果から、この臨床検体の場合,effector phaseのCD8^+T細胞のうち,アロHLA抗原に対する親和性がより高いT細胞がin vivoでクローン拡大をおこしたものと考えられる。
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