本研究の目的は、移植腎拒絶反応に動員された腎浸潤T細胞を回収し、それらが表現しているTCR cDNAの多様性を解析することにより、浸潤T細胞のクローナリティーに関する知見を得ることである。 1.拒絶・摘出腎浸潤T細胞の解析 拒絶・摘出腎からCD25^+活性化T細胞画分を分離し、anchored PCR法を利用したクローニングを行い、無作為に選んだ30〜40個のTCR β cDNA clonesの塩基配列を決定した。その結果、解析した4例中3例において、同一のCDR3配列を有するcDNAクローンの組が多数観察され、オリゴクローナルな浸潤T細胞集団であることがわかった。特に顕著なオリゴクローナリティーを示したそのうちの1例については、さらにsingle cell解析を行って確認した。またこのsingle cell解析からは、オリゴクローンがCD8陽性T細胞であることもわかった。 2.バイオプシー試料を用いた腎浸潤T細胞の解析 バイオプシー試料に含まれる極少数のT細胞からTCR解析を行うため、anchored PCRにより増幅した検体のTCR-cDNAを膜固定化V geneとハイブリダイズさせる方法を確立した。上述の腎摘出症例とは異なる別の腎移植5例について解析した結果、4例において特定のV geneに偏りが見られ、特にそのうちの3例はPBLには見られない顕著な偏りを示し、特定の浸潤T細胞オリゴクローンによる拒絶反応惹起をうかがわせた。さらに、経時的バイオプシー採取を行ったその中の1例については、OKT3投与後にV geneの偏りが減弱したことがわかり、免疫抑制のモニタリングとしての有用性も示唆した。
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