研究概要 |
最終年度の平成7年度は,本研究の目的である表在性膀胱癌のp53遺伝子の突然変異と予後との解析を明らかにすることを主題とした.すなわち 1)研究代表者の所属機関で診断治療された表在性膀胱癌および再発性膀胱癌の新鮮手術材料約30例の腫瘍および正常粘膜を研究材料に用い,さらに再発例については,初発時のパラフィン包埋材料が利用可能な症例に対して,パラフィンブロックからのDNAを抽出した. 2)対象症例30例全て,T1以下の表在性膀胱癌であり,組織学的異型度はG1ないしG2であった.DNA抽出はProteinase K処理およびフェノール/クロロホルム抽出によってゲノムDNAを抽出し,p53遺伝子のexon4から9までの範囲をカバーするようなプライマーを用いてpolymerase Chain Reaction (PCR)法によって増幅した. 3)臨床経過を観察し,再発の有無を明らかにし,再発例でp53突然変異が多く見られるか否かを明らかにした.その結果30例の表在性膀胱癌4例にmutationを認め,そのうち3例に再発が認められた.再発症例3例のうち2例は初発腫瘍と再発腫瘍とで同部位のmutationが存在していたが,1例ではheterogeneityが認められ,さらにその後浸潤癌へと移行し,浸潤性に富むことが認められた.
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