子宮頸癌発生予防を目的としたHPV感染の分子疫学的ならびに血清疫学的研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06671630
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 吉川 裕之 東京大学, 医学部(病), 講師 (40158415)
• 研究分担者: 忠内 薫 東京大学, 医学部(病), 助手 (90260497) ; 恩田 貴志 東京大学, 医学部(病), 助手 (40251269) ; 八杉 利治 東京大学, 医学部(病), 助手 (20251267) ; 横田 治重 東京大学, 医学部(病), 助手 (40182696)
• キーワード: 子宮頸癌 / HPV / PCR / 外陰癌

研究概要

1.子宮頸癌におけるHPV18Genomic Organization
HPV18陽性の子宮頸癌は、他のHPV陽性の子宮頸癌に比べ、予後が悪いといわれている。しかし、その理由はTransforming activityの差だけでは説明できない。Multi-cut enzymeを用いたSouthern blot解析でもHPV18陽性検体だけはtypical patternを示さないことが少なくない。またHPV16陽性検体の半数以上にはepisomal HPVが存在し、他HPV陽性検体のほとんどがepisomal HPVを有しているのに対し、HPV18陽性検体ではepisomeを有することはきわめてまれである。今回HPV18陽性検体とHPV16陽性検体でそれぞれE1およびE2領域にPCRprimersを設定したところ、HPV16陽性の30検体では両者とも全検体で増幅されたが、HPV18陽性の9検体中3検体ではいずれかのPCRが陰性であった。そこで、HPV18 genome全体を15のPCRsで増幅できる系(whole-genome PCR)を用いて、HPV18陽性の子宮頸癌9検体でHPV18のgenomic organizationを検討した。その結果3検体ではE1/E2領域に欠損を有し、1検体ではE5/L2領域に欠損を有し、1検体ではLCRにinsertionが認められ、高率にgene alterationがあることが判明した。HPV18陽性子宮頸癌の予後が悪いのは、HPV18DNAのgene function以外にこのようなgene alterationも関与している可能性がある。
2.外陰癌におけるHPVの検出
子宮頸癌と疫学的に類似している外陰癌11検体中8検体でHPV陽性であった。26types以上検出可能なL1-PCRを用いて検索したところ、従来から報告されているHPV6(1検体)、HPV16(4検体)、HPV18(1検体)以外にHPV51(1検体),HPV56(1検体)が検出された。一方前癌病変であるVINIII6検体(Bowen 1検体、Bowenoid papulosis 5検体)ではHPV16(4検体),HPV18(2検体)のみが検出された。

研究成果

• [文献書誌] Nakagawa,S.,Yoshikawa,H.: "Mutational Analysis of human papillomavirus type 16 E6 protein:Transforming function for human cells and degradation of p53 in vitro." Virology. 212. 535-542 (1995)
• [文献書誌] Kikuchi,A.,Yoshikawa,H.: "Intracervical ultrasonography with a high-frequency Miniature probe;A new diagnostic method for early invasive cervical cancer." Radiology. 198. 411-413 (1996)
• [文献書誌] Kitagawa,K.,Yoshikawa,H.: "Genomic organization of human papillomavirus type 18 in cervical cancer specimens." Jpn.J.Cancer Res.(in press).
• [文献書誌] Yamada,M.,Yoshikawa,H.: "Increased expession of thioredoxin/adult T-cell leukemia-derived factor in cisplatin-resistant human cancer cell lines." Clinical Cancer Res.(in press).
• [文献書誌] Nagano,H.,Yoshikawa,H.: "Association of multiple human papillomavirus types with vulvar neoplasias." J Obstet.Gynecol.Res.(in press).
• [文献書誌] Suzuki,N.,Yoshikawa,H.: "A possible role of estrone produced in adipose tissues in modulating postmenopausal bone density." Maturitus. 22. 9-12 (1995)