一酸化窒素(NO)の卵巣機能調節に及ぼす影響に関する研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06671633
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 久保田 俊郎 東京医科歯科大学, 医学部・産婦人科, 講師 (50126223)
• 研究分担者: 鎌田 周作 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (80169606) ; 麻生 武志 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (60093176)
• キーワード: 一酸化窒素(NO) / ブタ顆粒膜細胞 / 細胞培養 / ステロイド産生 / NO合成酵素 / ゴナドトロピン / 細胞増殖

研究概要

この研究は、NOの卵巣機能への関与を解明するため、卵胞成熟に重要な役割を果たす顆粒膜細胞の機能に及ぼすNOの影響について探究することを目的とする。本年度は、培養ブタ顆粒膜細胞(PGC)における性ステロイド産生の及ぼすNO/NOSの影響について探究した。まず、ブタ中小卵胞より得られたPGCにおいて、NO合成酵素阻害例であるN^G-monomethyl-L-arginine(LNMMA)を添加して24時間培養し、培養液中progesterone(P)濃度やestradiol(E_2)濃度をRIAにて測定し、またゴナドトロピン(FSHやhCG)を添加して同様の実験を行った。LNMMA(0.01〜1mM)は、PGCのE_2分泌をcontrolに比し有意に促進した(p<0.01)。FSH+LNMMA添加群では、LNMMA(0.01〜1mM)はE_2分泌(1mMで1.88倍)及びP分泌(1mMで2.87倍)を用量依存性に有意に促進した(p<0.01)。hCG+LNMMA添加群においても、1mMのLNMMAはP分泌を1.61倍と有意に促進した(p<0.01)。一方異性体であるDNMMAは、E_2・P分泌には影響を与えなかった。LNMMA添加24時間後の細胞増殖能をwst-1 assay法にて測定すると、PGCの細胞増殖能には影響がなかった。次に、NO供与剤であるsodium nitroprusside(SNP)の短時間培養における、PGCの性ステロイド産生に及ぼす影響を検討した。PGC1時間または4時間培養系では、SNP(0.1〜1mM)単独添加群、FSH+SNP添加群、hCG+SNP添加群で、E_2・P分泌は有意に促進された(P<0.01)。
以上により、NOはPGCにおけるステロイド産生能に対し、長時間の培養実験(24時間)では抑制的に作用し、短時間(1〜4時間)では促進的に作用することが証明され、ゴナドトロピンによるE_2・P分泌調節にもNOが深く関与することが判明した。さらに現在、PGCにおける合成酵素の存在の確認を、免疫組織学的・分子生物学的手法を用い検討中である。

研究成果

• [文献書誌] T.Kubota et al.: "Autocrine/paracrine function of transfurming growth factor-β1 in porcine granulosa cells" Human Reproduction. 9. 2118-2122 (1994)
• [文献書誌] T.Kubota et al.: "Endothelin-1 as a local ovarian regulator in porcine granulosa cells" Hormone Research. 41. 29-35 (1994)
• [文献書誌] M.Masuda,T.Kubota et al.: "The effect of nitric oxide on steroidogenesis in porcine granulosa cells." 3rd International Symposium on Warian Function. (Abseract). 38 (1994)
• [文献書誌] 増田美香子,久保田俊郎 他: "ブタ顆粒膜細胞のステロイド産生能および細胞増殖能におよぼすNO影響" 日本不妊学会雑誌. 39. 530 (1994)
• [文献書誌] 増田美香子,久保田俊郎 他: "ブタ顆粒膜細胞のステロイド産生能および細胞増殖能に及ぼす一酸化窒素(NO)の影響" 第47回日本産科婦人科学会総会. 4月(発表予定). (1995)
• [文献書誌] T.Kubota et al: "Frontiers in Endocrinology vol.4 Pergpectives on assisted reproduction" Ares-Serono Symposia Publication,Rome,I, 749 (1994)