研究概要 |
1)培養細胞における uPA(urokinase type plasminogen activator)およびPAI-1(plasminogen activator inhibitor type-1)の効果 ヒト白血病由来U937細胞に対し,uPAやPAI-1を単独で添加しても細胞には変化が認められなかったが,uPAとPAI-1を同時に添加することにより細胞の増殖傾向を確認した。このことはuPA受容体を介して uPA/PAI-1 complexが細胞質に取り込まれ、その結果として細胞が合成期に変化し、増殖が確認された。 2)胎盤における細胞外マトリックス分解酵素とそのインヒビターの役割 胎盤に含まれる幾つかのserine protease とそのインヒビターをELISA法を用いて測定し、その役割について検討した。tPA や uPA に比べPAI-1,PAI-2 といったインヒビターが妊娠週数のいずれの時期においても優位に存在することが示された。しかし絨毛細胞表面すなわち絨毛間腔において血栓が形成されることはほとんどない。このことにより血栓形成を阻止するあるいは形成された血栓を融解する機構があると考えられた。そこで肝臓より産生されるAPC(activated Protein C)が PAI-1と複合体を形成することに着目した。その結果,uPA/PAI-1 complex にはフィブリン融解能は認められなかったが、そのuPA/PAI-1complex に対し過度のAPCを加えることによりフィブリン融解能が復活することが明らかとなった。このことにより腫瘍細胞においても同様の機構が存在するものと推定される。
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