卵巣癌は化学療法施行中や再発症例での抗癌剤耐性腫瘍の出現が最大の問題点である。我々の耐性株は約50倍の耐性を獲得し、世界的にみても強力な耐性度を示している。蛋白レベルからはシスプラチン50倍耐性株で親株と比較して明らかに2本のバンドの増強が認められ、逆に1本のバンドの減弱と1本の消失が認められた。現在、このバンドを抽出中であるが、絶対量が少なく、大量培養を繰り返して精製に努めている。一方、分子生物学的アプローチではsubtraction hybridizationにより多数のコロニーが拾えている。これらのコロニーを各々培養してcDNAを精製中である。 一方、シスプラチン以外にもプラチナ系抗癌剤が開発されており、それらの耐性株を作製することによりプラチナ系抗癌剤に対する耐性機序の解明に努めている。現在までに作製した耐性株はカルボプラチン4.1倍、DWA6.0倍である。これらの耐性株を使用してプラチナ系抗癌剤を含む各種抗癌剤に対する交叉耐性を調べたところ、シスプラチン、カルボプラチン、254-Sは相互に中等度の交叉耐性を示しているがシスプラチン耐性株及びカルボプラチン耐性株に対してNK121とDWAは交叉耐性が少なく、臨床的にも再発症例や耐性症例に期待される。現在、更にこれらの細胞株を用いて耐性機序に関与すると考えられているグルタチオンSトランスフェラーゼや細胞内の各種薬剤濃度を検討中である。
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