蛋白レベルからはシスプラチン50倍耐性株で親株と比較して明らかに2本のバンドの増強が認められ、逆に1本のバンドの減弱と1本の消失が認められた。しかしながら特異的バンドの抽出は他種類の蛋白が混在して困難であった。薬剤耐性にはグルタチオンによる解毒の関与が報告されている。そこで我々はグルタチオンカラムでまづ蛋白をグルタチオン結合蛋白だけにした後に、電気泳動した。その結果、複数のバンドの消失や増強を認め現在アミノ酸分析中である。卵巣癌細胞株(NOS2)とそのシスプラチン耐性株(NOS2CR2)を大量培養し、各々グルタチオンカラムによりグルタチオン結合蛋白を抽出した。NOS2CRに特異的に認められたバンドを切り出しアミノ酸配列を調べた。その結果最も濃いバンドはグルタチオン-S-トランスフェラーゼであった。またその他のバンドも抽出しアミノ酸配列を調べたが蛋白が修飾されており従来の方法ではアミノ酸配列を決定できなかった。これらのバンドは薄いため十分な量が採取できなかった。さらに大量培養し同定する必要がある。一方、プラチナ系抗癌剤としてはシスプラチン以外にカルボプラチンとアクプラが市販されておりカルボプラチン耐性株(NOS2CBR)を作成しプラチナ系抗癌剤(シスプラチン、カルボプラチン、アクプラ、NK121、DWA2114R、SCT-078)だけでなく他の一般的抗癌剤との交叉耐性を調べた。NOS2CBRはカルボプラチンに対して4.1倍耐性でシスプラチン、アクプラにそれぞれ5.7、5.1倍の交叉耐性を示した。一方、NOS2CR2はシスプラチンに16.3倍、カルボプラチンに10.4倍、アクプラに12.5倍の交叉耐性であった。即ち、プラチナ系耐性株は薬剤は異なっても同系の薬剤に対して強い交叉耐性を有しており、同一の耐性機序が働いているものと考えられる。
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