膜結合型酵素アミノペプチダーゼに対する阻害剤でるウベニメクスによる癌細胞増殖抑制効果の実態とその機序を解説するための実験を行ない以下のことを明らかにした。 1.ウベニメクスはアミノペプチダーゼN(AP-N)とアミノペプチダーゼBの活性を阻害することが判明しているが、昨年度の研究に引き続き癌細胞について、ウベニメクスによる癌細胞増殖に対する抑制作用をMTT assayにより詳細に調べた。婦人科癌のうち、絨毛癌4株では全株に高いウベニメクスに対する感受性を示し、子宮頚癌2株・内膜癌1株では中等度感受性を示し、卵巣癌5株のうち2株は高い感受性を示し、3株は感受性が無かった。消化器癌には感受性が無かった。 2.ウベニメクスに3Hトリチウムをラベルしたもので各細胞のウベニメクスuptakeを調べたところ、ウベニメクスへの感受性の高い順番に最も多量のuptakeが見られ、ウベニメクスに対する感受性とウベニメクスuptake量は相関した。これは前年度より検索を進めているアミノペプリターゼN活性とも相関した。 3.ウベニメクスの細胞増殖抑制作用のcell sycleへの影響を調べるため、フローサイトメトリーによるDNAhistogramの解析を行なったところ、最もウベニメクスへの感受性の強い絨毛癌株についてもそのcell cycle分布への影響は見られなかった。したがって、抗癌剤にみられるような細胞代謝サイクルの'特定のある一点'に作用するものは無いといえる。アミノペプチダーゼNの組織学的局在性などに関する研究は現在進行中である。追って論文として報告したい。
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