平成6年度は、まず成熟ICRマウス卵巣より、機械的・酵素的処理を加えることにより比較的均一ゴナドトロピンに低い反応を示す初期卵胞を分離し、ウシ胎仔血清を含む培養液中で組織培養し、ゴナドトロピンへの反応を主にステロイド産生能を指標にして安定な系の確立を目指した。ところが、成熟マウスでは、すでに多くの卵胞がゴナドトロピンへの反応性を獲得していること、場合によっては卵巣内に排卵後の黄体が存在していることなどがあり、卵巣は小さいながら、未成熟のマウス卵巣を使用することに変更した。まず基礎実験として2週齢前後のICRマウスにPMSG+hCGによる過排卵刺激を加えて反応をみたところ、13日齢マウスでは全例に排卵がみられなかったものの、16日齢マウスではほぼ全例に排卵を認めたため、ゴナドトロピンへの低反応性卵胞として12日齢マウス卵巣を、またゴナドトロピン高反応性卵胞として28日齢マウス卵巣を用いることにした。これは、12日齢のマウス卵巣を用いることで、均一でかつ低ゴナドトロピン反応性の卵胞を得ることが可能となった。しかしながら、次の段階として、サイトカインその他の成長因子の卵胞発育への影響を検討する上では、無血清培地での安定した培養条件が望まれるが、現段階では、いまだ確立したとはいえない。分離操作での細胞障害がその大きな問題点と考えられ、初期卵胞発育に対する免疫系の関わりを明らかにするためには、さらに培養系を改良する必要があると思われる。
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