研究概要 |
細胞に働き、FSH分泌のみを促進するが、そのメカニズムについてはよくわかっていない。本研究では細胞分離技術、蛍光顕微測光技術、また分子生物学的手法をもって従来は困難であったアクチビンの下垂体における緻密で複雑な作用機序を解明したい。本研究成果は生殖生理あるいは不妊症においてアクチビンの治療薬としての可能性を検討する上で重要な意味を持つ。 まず、下垂体アクチビン標的細胞について検討したところアクチビンA,AB,Bの標的細胞群の間には少しずつ相違はあるものの概ね共通の性質がありその50-70%はGHRH、40-70%はTRH反応細胞群に属していることが明らかとなった。下垂体細胞純化についてはセルソーターとレーザーを用いて行い、やはりGH、PRL分泌細胞群に標的細胞が存在し、しかもその多くはGHRH、TRH両方に反応する細胞であることが明らかとなった。このことからTRHに反応する細胞とGnRHに反応する細胞の関係を明らかにするためにPRL分泌細胞とLHあるいはFSH分泌細胞の関係を個々の細胞について検討した。その結果、ドット侮ロットブロットによる方法ではPRL分泌細胞とLHあるいはFSH分泌細胞の間には一定の比率で機能的共存が存在し、LHあるいはFSH分泌細胞のそれぞれ18.4%、15.5%はPRL分泌し、またPRL分泌細胞のうちのそれぞれ6.23%、5.91%がLHあるいはFSH分泌していることが明らかとなった。また細胞内カルシウムの反応からPRL陽性細胞の中にはGnRHとTRH療法に反応する細胞の存在が明らかとなった。以上の結果からアクチビンの標的細胞つまり刺激を受けてFSH分泌細胞に形質転換すると考えられる細胞はGHあるいはPRL分泌細胞の中に存在することが示唆された。しかし形質転換の過程については標的細胞の比率が小さいために明らかにすることが困難であった。
|