免疫性不妊症の発症機序を解明していくためには、抗精子抗体の対応抗原の同定が不可欠である。今回我々は、米国ロックフェラ-大学、The Population Councilにおいて同定された不妊症患者の抗精子抗体と反応し、ラット精子との交差抗原性を有するヒト精子抗原75kD蛋白質について、以下の実験を行い、いくつかの知見を得た。 1.75kD蛋白質中の不妊症と関連する抗原分画決定のためのポリペプチド合成 ヒト精子抗原75kD蛋白質の既に決定されたアミノ酸配列より、親水性インデックスを算定して、蛋白質の抗原性に最も関係があるとされる親水性の領域を推定した。このうち2つの領域に関して16残基のアミノ酸より成るポリペプチドを合成した。すなわち、Fmoc固相法によってペプチドを合成後、Fmoc基を脱保護し、逆相HPLC法で精製した。この2つのペプチドのアミノ酸組成比を測定し、当初の予定したペプチドとほぼ相同であることを確認した。 2.合成したポリペプチドの抗原化とラットに対する能動免疫 合成した2つのポリペプチドを、キャリア蛋白質であるkeyhole limpet hemocyaninと縮合させることによって抗原化した。膣スメア法により前もって雌ラットの性周期を確認しておき、12週〜20週令の雌ラットに抗原化したポリペプチドを能動免疫中である。能動免疫の約1カ月後にELILSA法を用いて同ペプチドに対する抗体産生を確認した後、雄ラットをmatingさせ10日後開腹し、子宮内の胎仔数をカウントして避妊効果を検討する予定である。さらに採取される抗血清を用いて、対応抗原を決定すると共にラットの体外受精系への影響を検討する予定である。
|