研究概要 |
本研究の目的は、腫瘍浸潤の多段階的制御機構のうち特に腫瘍細胞自身の細胞外基質破壊能に注目して、腫瘍細胞における細胞外基質蛋白分解酵素および腫瘍細胞間接着因子の発現を免疫組織化学的手法を用いて明らかにし、HE染色上の腫瘍浸潤像と対比する中で、その発現が婦人科微小浸潤癌においてもつ意義について検討を加えることにある.平成6年度においてはすでに収集された子宮頚部微小浸潤扁平上皮癌症例(FIGO分類基準によるIa期126例うち日本産科婦人科学会分類基準によるIa期78例)および微小浸潤腺癌症例(FIGO分類基準による19例)を対象として臨床的事項の調査を行い(平川・斉藤・重松),さらにHE標本をすべて再鏡検して,微小浸潤癌病巣の有無およびその存在範囲のマッピングを行っている.同時に微小浸潤癌の病理組織所見についても組織型・核異型度・細胞質の変化・上皮芽出像・基底膜破壊の有無・間質反応・癒合浸潤の有無・脈管侵襲の有無などについて検討している(平川・加来).微小浸潤扁平上皮癌症例の患者平均年齢は50歳であった.浸潤の深さが3.0mm以下の症例が74%であり3.0から7.0mmの症例は26%であった.癒合浸潤は13%にみられ,間質反応は癒合浸潤巣周囲に強くみられた.また脈管侵襲は6%にみられている.一方微小浸潤腺癌症例では,上皮芽出像が1例を除いた18例に認められている.子宮頚部微小浸潤扁平上皮癌および微小浸潤腺癌症例の臨床的事項の調査とHE標本の再検討もあわせて行っている.さらに対象症例で微小浸潤癌病巣を伴う切片で,新たに組織切片を作製し,免疫組織化学的染色法であるStreptavidin-biotin法(SAB法)を用いて,抗IV型コラゲナーゼ抗体・抗カドヘリン抗体・抗Ki-67(MIB 1)抗体を一次抗体とした染色を行い(平川・加来・重松),免疫組織化学的に染色された標本の染色態度について組織学的に検討している(平川・加来).
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