研究概要 |
昨年度までの研究で、子宮体癌細胞における浸潤能に関し、E-cadherin,MMP,K-ras点突然変異などの各因子との関係について検討した。子宮体癌細胞におけるin vitro浸潤能が分化度(E-cadherinの発現)の低下に相関することを明らかとし、浸潤におけるMMP-9産生の重要性を見出した(日産婦誌、46、1994)。 本年度は、浸潤に伴う細胞形態との関連に着目し、細胞外matrixと癌細胞の相互作用、細胞外matrixの癌細胞浸潤能に与える影響を形態学的に検討した。また、これらの各因子に対する抗体の浸潤形態に対する影響について検討した。in vitro invasion assayを用い、抗type IV collagenase抗体、抗E-cadherin抗体の添加実験を行い、抗type IV collagenase抗体により浸潤能は抑制され、抗E-cadherin抗体では浸潤能の促進がみられることを確認した。さらに、癌細胞に対する細胞外マトリックスの影響を検討するためにMatrigel内3次元培養による形態学的検討を行った。中等度ー高分化型腺癌由来の株細胞では、球形のコロニーを形成し、Matrigelに対して低い浸潤能を示した。高浸潤性の細胞はMatrigel内培養でも樹枝上に発育し、周囲に浸潤した。高浸潤細胞の浸潤性発育は抗type collagenase抗体によりほぼ完全に抑制された(日産婦誌、46、supple、1994)また、抗E-cadherin抗体によりE-cadherin発現細胞の細胞接着は阻害され、浸潤能の昂進が認められた(日産婦誌、47、supple,1995)。 我我はinvasion assayとgel内3次元培養を併用することにより、癌細胞の浸潤能を定量的かつ定性的に評価する方法を確立した。浸潤修飾因子の添加によりin vitroにおいて癌細胞の浸潤能を抑制する可能性が示された。さらに、高浸潤性および低浸潤性癌細胞の超微形態学的特徴を明らかにした。
|