E-cadherinの発現、浸潤能の異なる子宮体癌細胞株を用いて、抗E-cadherin抗体添加による浸潤能の変化をin vitro invasion assayを用いて測定した。またこれらの実験でmatrix metalloproteinase(MMP)の産生能の変化の有無について検討し、更にこれらの実験での超微形態学的変化について観察した。低浸潤能を示す2つの細胞株では抗E-cadherin抗体 HECD-1添加により浸潤細胞数は有意に増加した。しかしE-cadherinの発現が乏しい高浸潤能を示す細胞ではHECD-1添加によって非添加の同一細胞株と浸潤細胞数には差が認められなかった。なお同抗体を投与する事による細胞増殖に対する変化は実験した抗体の濃度では認められなかった。 次にHECD-1添加によるMMPの産生能の変化はいずれの細胞株でも認められなかった。超微形態学的変化についての観察では高浸潤能を示す細胞株でもporeに僞足様突起をfilter内のMatrigel中に延ばしながら通過するのに対し、低浸潤能を示す細胞株ではporeを占拠し、球状に突出し通過する所見を示した。HECD-1を投与する事により低浸潤能を示した細胞は高浸潤能を示した細胞株と類似した超微形態学的特徴を示し、細胞間の結合は疎となり、細胞表面はmicrovilliが豊富になり僞足様突起を出して浸潤する所見が観察された。以上の様に細胞間の接合は浸潤能に影響し、形態学的変化も伴った。 なおこれまでの実験と異なるが当科で治療した子宮体癌患者の組織を用いてDNA-mismatch-repair systemの異常について検討した結果、低分化型腺癌でmicro-satelliteのreplication errorsが多い事を認めた。今後検討を要する課題である。
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