研究概要 |
黄体の退縮機序を明らかにするためわれわれの確立したラット実験モデルを用いてfunctional luteolysisからstructural luteolysisへの経時的変化を検討した。血中progesteroneは低値のまま変化せず、20α-dihydroprogesterone値は漸減した。matrix metalloproteinase(MMP)-2活性は増強し、一方tissue inhibitor of metallo-proteinase(TIMP)mRNA発現は減少した。つまりstructural luteolysisの発生過程ではMMP-2の増強とTIMP発現の減少が相まって細胞がマトリックスの破壊がおこり、これが総プロゲスチン値の低下に関わっている事が示唆された(日本産婦人科学会発表予定)。 apoptosisの関与を検討するためNick end labeling法で検討したが、structural luteolysisの黄体ではapoptosisが起きている細胞が多く認められ、重要なメカニズムの一つであることが示唆された。また排卵卵胞閉鎖過程におけるapoptosisの関与をPMS-hCGで過排卵させたラットで検討したが、hCGを投与せずPMS投与5日後の卵胞よりもhCG投与後、排卵しないで残った卵胞に明らかなapoptosisが認められ卵胞閉鎖過程では、LHサージがない事ではなく十分なLHサージがある事がapoptosis発生に重要である事が示唆されこれは非常に興味深い結果であった(投稿中)。 活性酸素のヒト黄体退縮過程への関与が注目されており、われわれは過酸化水素が細胞内cAMP濃度を減少させる事を報告しているが(J Clin Endocrinol Metab),今回ヒト黄体化顆粒膜細胞を用いた実験では過酸化水素は細胞内ATP濃度を減少させるが、cAMPの低下はこのATP濃度の減少とは関連のない事を明らかにした(投稿中)。
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