母乳中に存在するtransforming growth factor(TGF)-βの生体内での免疫活性作用機序を明らかにするために、マウスを用いてTGF-βを経口的、または肝臓内へ投与することにより、抗体産生が増強することを認めたことより、腸管上皮細胞、肝実質細胞由来の免疫活性因子を調べた。ヒト小腸上皮細胞(Intestine407)およびマウス正常肝実質細胞(Clone1469)の培養上清はマウスに抗体産生を増大させることより、Clone1469から分泌されるサイトカインをELISPOT法にて検出した結果、Clone1469は、かなりの量のinterleukin10(IL-10)を分泌することを見い出した。またClone1469細胞のmRNAを抽出し、IL-10のprimerを用い、PCRにて237bpの特異的なバンドの増幅が認められ、さらにClone1469培養上清中のIL-10をELISA法にて確認した。それゆえ、肝実質細胞(Clone1469)はIL-10を合成・分泌し、TGF-βをClone1469培養中に添加することによりClone1469よりのIL-10の分泌は増大した。また、Clone1469培養上清による抗体産生の増大活性は、抗IL-10抗体を添加することにより抑制された。以上の結果より、TGF-βは少なくとも一部において肝実質細胞(Clone1469)よりのIL-10の産生を促進し、生体内の免疫増強作用を発揮するものと推測しえた。
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